夫婦で共通の趣味を楽しまれている方は多いでしょうが、それが格闘技となるとどうでしょう? 寺田忠則さんと順子さんは、ここカルペディエム鎌倉・大船で一緒に柔術を習われているご夫婦です。忠則さんがやっていた柔術を数年後に順子さんも始めたきっかけ、柔術を通して見るお互いの姿など、いろいろお話しいただきました。
寺田忠則さん:会社員。柔術歴7年、紫帯。得意技は逃げ技(持ち前の体のやわらかさを発揮されています!)。過去に多くのスポーツを経験されていますが、日数も経験年数も一番多いのはブラジリアン柔術。ランニングも好きで「世界の色々なところでランニングをしてきましたが、早朝の江ノ島付近から西に延びる海岸線のコースは最高に気持ちいい!」
順子さん:歯科助手。柔術歴2年、青帯。得意技はニースライスパス。過去には走り高跳びとランニングをされていました。おすすめの場所は「大船の鳥良商店。練習帰りの行きつけです(笑)」
忠則さんはもともと柔術歴がありましたが、ご夫婦で柔術をされるようになってからは2年ほどですね。
順子:はい。すっかり柔術のある生活に慣れました。最低でも週に3~4日は一緒に練習に行くサイクルができているので、一週間柔術がお休みとなると、二人で「何したらいいんだろう?」って。
一人で練習に行きたいと思うときはないですか?
忠則:ないですね。二人ともお酒を飲んだりご飯を食べに行くのが好きで、普段から一緒に行動することが多いんです。柔術もお互い好きなので、練習もほとんど一緒に来ています。
順子:練習後に飲んで帰るにしても一緒だから、どちらかに帰宅を待たせて申し訳ないっていうこともない。笑
順子さんが柔術を始めたことで、ますます仲良くなられたんですね。
忠則:そうですね。プラスアルファで良いですね。
順子:私はもともと無趣味なんです。いつも夫の趣味に付き合っているうちに自分も楽しくなって続けている感じです。好きなものはあっても一人でやるほど好きっていうものはなくて、夫と一緒にやっているのが楽しいです。
忠則:70歳とか越えたときに、夫婦で共通の趣味がないってつらいと思うんですよ。共通の趣味がないと一緒に何かをするということもなくなるし、会話も少なくなるんじゃないかと。ですので、できるだけたくさんの共通の趣味を持って時間を共有できるようにしないと夫婦としての意味があまりなくなるかもしれないと、自分の好きなことには積極的に誘っています。その中で妻がやりたくないことはやらなければいいだけなので。でも今は夫婦でバイクやスキー、柔術と楽しめているので、二人で仕事を引退したとしても時間が足りないくらいです。
これまでもいろいろな共通の趣味を持ちながら、そこに柔術が加わったんですね。
忠則:柔術は季節を問わずできることもあり、年中やっているので共有する時間がまた増えました。会話もさらに増えましたね。
順子:時間もそうですが、仲間を共有できるのもより楽しめているひとつです。
過去には順子さん以外のご家族みなさん、柔術をされていたとか?
忠則:最初は子供の護身術と習い事の一つとして始めたのですが、その時師範から「お父さんも一緒にやって、子供の気持ちを理解してあげることが必須ですよ」と言われ、ご最もと思い僕も始めました。ところが、僕の方がどっぷりとハマってしまったんです。その後海外に3年間駐在していた間も、息子と僕は継続して現地のアカデミーで稽古を続けました。
順子:子供と夫が始めたころは私も一緒にやりたいとは全然思いませんでした。子供たちがやってるところを見て「なんか痛そうだし、難しそう。」というイメージで…
それでは、順子さんはなぜ柔術を始めようと思ったのですか?
順子:これまでと変わらない生活をしていたのに、年齢とともにいろんなところに脂肪がついてきた時期があったんです。ちょうどその時にガールズクラス(フィットネス45分+柔術60分のプログラム)が始まったと夫から聞いたのがきっかけです。当初はフィットネスクラスをメインに始めたんですが、柔術が思いの外すごく楽しくて。
週一回のガールズ会員で始められ、現在はフルデイズ会員に。
順子:ガールズ会員の時、一度だけガールズクラスが臨時休講になったんです。その振替で一般のオールベルトクラスを受けてみたら、思っていたほど男性と組み合うのが嫌じゃなかったんです。それまではやはり、男性と組むことに抵抗がありました。力の差もあるだろうし、お互い汗もたくさんかくし。でも、いざやってみたら自分も必死で、そんなことを考える暇もなく楽しかったですね。みなさん気を遣って優しく練習してくれるのもあり、こういう雰囲気なら大丈夫かなとフルデイズ会員に変更しました。
順子さんの柔術への取り組みは、忠則さんから見ていかがですか?
忠則:吸収が早いですし、伸び代があっていいですね。いまは青帯になりたてなのでアラはたくさんありますけれど、そういったのを超えていけたらとても強くなるだろうなって。いまのペースで頑張っていけば、次の帯も遠くないんじゃないかと思います。
最近のスパーを見ていると、順子さん相手でも男性が以前ほど手加減をしなくなってきたように思います。忠則さんは心配になることはないですか?
忠則:全然気にならないし、むしろいいことじゃないですか。お互い気を遣って練習するのも面白くないでしょうし、汗で水たまりができるくらい一生懸命スパーしたらいいですよ!
一同笑
いまは順子さんご自身も柔術をやっていることで、忠則さんの柔術への見方も変わったのではないでしょうか?
順子:夫は、すごいところがたくさんあり過ぎますね。サブミッション一つをとっても私はまだなかなか極めることができないんですが、夫は「そこに手や足があるから極める」と言うんです。私はそういう風に感じられたことがまだないので、単純にすごいなと思っています。あとは、ポジションや技などを理論的に理解しているところでしょうか。私はそういうところが不得意だし苦手なので、理解できたら自分もちゃんと動けるようになるのかなと思って見ています。
一番近くにそう思える柔術の先輩がいてくれるって、いいですね。
順子:そうなんです。わからないことがあっても家ですぐ聞けますし、わかりやすく教えてくれます。「ちょっとそこで寝てみて」って、すぐ組むこともできますし。
そんなお二人を見て、お子さんたちはどんな反応ですか?
順子:子供たちは、もう何も言わないですね。「ああ、またやってる」ぐらいの感じです。笑
忠則:むしろ時々子供も一緒になって「こうやるんだよ」って、説明してますね。笑
夫婦でライバル心などは起こらないですか?
忠則:起こらないですよ!笑
順子:私にはまだ出来ることが少ないので、夫はライバルという対象にはならないですね。他に一緒にやっているスポーツでも、競い合うことはないです。
忠則:ライバルとまでは言いませんが、ひょっとしたら妻は自分より柔術が上手くなるかも、とは思っていますね。そうなっても全然いいんですけど。
順子さんの今後の目標はワールドマスターとお聞きしています。いつ頃一緒の出場を目指していますか?
忠則:え? 僕も行くんですか?
順子:行くでしょ!笑 青帯で、2年後の出場を目標にしています。2年めっちゃ頑張ったら、ワールドマスターズの舞台に立っても恥ずかしくない技術力を得られるんじゃないかな、と。ボロボロに負けるかもしれないですけれど、2年間一生懸命頑張っても負けるくらいに世界の青帯はすごいんだ、まだまだ世界の壁は高いなあって体感できるなら、それはそれでええやん。
ワールドマスターはマスター世代にとっての最高峰の大会ではありますが、それでも比較的参加しやすく、幅広い年齢層の柔術を楽しむ方々が集まる世界大会だと思います。
順子:そうですよね。柔術は、帯・性別・年齢・体重と細かく分かれているから、世界大会っていってもすごく遠いものじゃないんだなって。すごく頑張れば出られるし、何歳でもチャレンジしていいんだなって思えます。
忠則:でもまずは国内でちゃんと勝たないと。
順子:そうだね!